2017年4月9日日曜日

医師に残業の上限は必要か?

残業 「月80時間」上限、政府調整 19年度導入目標

厚生労働省が昨年公表した過労死白書によると、過労死ラインとされる月80時間超の残業があった企業は約2割に上り、上限規制で一定の効果が期待される。
労基法は残業を原則禁止しているが、労使が同法36条に基づく「36(さぶろく)協定」で特別条項を付ければ時間制限を外すことができる。長時間労働を助長すると指摘されており、昨年問題になった広告大手・電通の過労自殺では亡くなった社員の時間外労働が月100時間を超えていた。
厚生労働省
勤務時間の上限について、原則は労働基準法第32条で1週間40時間、1日8時間と決まっています。また、一定の条件を満たした場合には1ヶ月を平均して1週40時間にする制度(1ヶ月単位の変形労働制)や1年の労働時間を平均して1週40時間にする制度(1年単位の変形労働制)があり、これを超える労働を法定時間外労働と言い、いわゆる残業ということになります。

労働基準監督署によると
「管理監督者」は労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません.

リンク:「医師は適用除外を」、時間外労働の上限規制

残業時間の上限について議論がかわされています.
医師の仕事に労働時間の上限を設ける必要性

医師の残業時間に関しては,「日直・当直時間を含むかどうか?」に始まり,「もし医師の残業時間に上限を設けると国内の医療に多大な影響を及ぼす」など様々な意見があります.当直と言っても,院内の急変に備える当直(俗に言う寝当直)と,急性期病院で救急車を受け入れる当直では労働の量も質も全く異なります.


全ての人に対して,労働時間の上限があるわけではなく,自営業者,管理監督者にはそもそも労働時間の上限がありません。自営業者であれば,忙しくて体調をこわすようであれば,営業時間を短くしたり,仕事を断るという選択肢を選べるわけです.


ですが、医師の場合は、
・適切な理由なく診療を断ってはならない(応招義務)
・人命をあずかっている
というかなり特殊な環境にあります。
さらに,自分の健康状態,ストレス耐性,自分の家庭環境なども影響するため,全員に当てはまる労働時間の上限を設けることはなかなか難しいですね.


一人の医師として思うのは,「嫌なら辞職する選択肢を常にもつ」というのがとても大切だと思います。厳しい話ですが,誰も自分の事は守ってくれません.実際に,「救急医が全員病院を辞めた」というニュースをよく耳にします.これは正当な権利であり,非難されるものではありません.


ですが、その地域に救急病院が一つしかなく、「小児科医が2人しかいない。自分が辞めたら,地域の医療が崩壊してしまう」となると「いやなら辞める」と言いにくい現状も理解できます.なかなか深い問題ですね...